よけいなお話1-4



John Von Neumann
1903-1957
このような気まぐれに起こるランダム現象を再現する原理を考え、それを原子炉の放射能遮蔽問題に応用した人物がおります。

ハンガリー生まれのジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann,1903-1957,Princeton)という天才です。数学、物理学、経済学、ゲームの理論などでも有名ですが、現在のコンピュータのようにプログラムをコンピュータの記憶装置に格納しておき、それを実行するというstored program方式を考え出した人です。

今ではこの方式によるフォン・ノイマン型コンピュータが当たり前と思っている人が多いと思いますが、1945年に実用化に成功しています。すごい発想だったのです。それまでは電卓で計算するがごとくコンピュータの外部から計算の順序に従いワンステップずつ命令を紙テープなどから読み込んでは計算処理を実行していたのです。

また乱数をコンピュータの中で作るというのもノイマンの発明です。

ついでに、コンピュータの歴史を述べておきます。これはGeoffrey McLennan (Univ. of Iowa)によるものです。明らかな年号の間違いは訂正してあります。

1600’s中期 Pascal 初の機械式計算機械を開発。
1830’s初期 Babbage 自動式機械式計算機を完成、Difference Engine とよばれる。
1830’s中期 Babbage 初の機械式ディジタル計算機−Analytical Machine の開発を始める。Augusta Ada Byron (Lord Byronの娘)によりプログラムが作成される。
1880 Billings (物理学者で Army Surgeon General’s library館長)カード利用のアイディアを考え、1880年と1890年の国勢調査に使う。
1882 Hollerith 288穴式紙カードを開発。1ドル紙幣のサイズ。
1890 56台のHollerith マシンにより国勢調査を1ヶ月で処理。
1896 Hollerith 、Tabulating Machine Company を設立。
1911 同社を Computing Tabulating Recording Corporation (CTR)に身売り。
1924 CTR 、 International Business Machines (IBM)となる。
1940 Stibitz (Bell Labs) それまでの10進にとって代わるリレー式準自動式2進計算機を開発。
1941 Zuse (ドイツ)初めてプログラム制御ができる電子・機械式ディジタル計算機を開発。2進機械。
1942 Atanasoff (Iowa State大) 電子式ディジタル計算機を開発。
1943 Aitken (Harvard) IBM と共同で Mark I を開発。2進システムを採用。
1943 Turing & Newman (England) 真空管を使い全電気式ディジタル計算機 Colossus を開発。
1945 von Neuman (Princeton) プログラム格納(stored program)方式を実用化。
1946 Mauchly & Eckert (Univ. of Penn) Electronic Numerical Interpretor and Calculator (ENIAC)を完成。この機械では計算の方法を命令するためにワイヤを差し替えなくてはならなかった。
1940’s末期 Mauchly & Eckert により Eckert and Mauchly Electronic Control Company of Philadelphiaが設立。 真空管5000本を使い、von Neumanのストアド・プログラム方式による Universal Automatic Computer(UNIVAC)を開発。
1948 IBM 604 (真空管1400本)発売。
1951 Remington Rand 社 Mauchly & Eckertの会社を吸収合併し、1950年の国勢調査にUNIVACを使う。 UNIVAC は10進のマシン。
1952 IBM 社 701 Defense Calculator を開発。
1959 IBM 7090 真空管の代わりにトランジスタを使う。
1959 Kilby (TI) & Noyce (Fairchild Semi conductor) 回路ボードにトランジスタ結晶を使用。これがシリコン・ウェハーの集積回路(IC)の初め。
1962 Clark & Molnar (MIT) 特殊用途目的の Laboratory Instrumentation Computer (LINC) をデモンストレーション。
1963 固形集積回路 (Solid state integrated circuits) 開発。 この技術は large scale integration (LSI) と呼ばれる。 さらに very-large-scale integration (VLSI) へと発展する。
1964 Digital Equipment Company (DEC) により LINCマシンの商業生産開始。
1965 Programmed Data Processor (PDP-8) 発売。
1965 Cray (Control Data Corporation) 並列処理コンピュータを設計。
1968 Boyce 、Fairchild Semiconductor 社から 独立し、Intel 社を創業。RAM チップが磁気コア・メモリにとって代る。
1971 Intel 4004 チップ、トランジスタにストアド・プログラム方式を実現。
1970’s初期 Kay (Xerox) マウス装備のPCのプロトタイプを開発。
1976 Apple 1 computer 発売。
1981 IBM PC、 Microsoft DOS を導入。
1984 Apple Macintosh (Xerox のアイディアの多くを採用)出る。この名称とアイコンの採用は Ach Mach (Negroponte により創立されたCAD研究所)からとったもの。
1980 Intel 8080 トランジスタ 2,300 個分を含む。
1986 Intel 80386 トランジスタ 750,000 個分。
1989 Intel 80486 トランジスタ 1,200,000 個分。
1992 Intel Pentium トランジスタ 3,100,000 個分。
1996 Intel  P6 トランジスタ 5,500,000 個分。
パリのグランパレの裏側に入り口がある計算機械の博物館には、歴史的な計算機械やそれらのレプリカが飾ってありました。中には動かせるものもあったと思います。ワシントンD.C.のスミソニアンでも同じような展示があった記憶です。

武蔵小金井の東京農工大学工学部には「計算機の博物館」があります。西村恕彦教授が在任中に集めたものです。西村さんに頼まれて、何年かの間、講義を持たされていた頃に見せてもらいましたが、その後もいろいろなものが収集されています。

もうひとつ思い出しました。20年ほど前だったと思いますが、IBMが同社の何かの記念に「数学の年表」を作成頒布したことがあります。慶應義塾大学理工学部管理工学科のフロアの壁に、立派な額に入れられて飾ってあります。それが、畳何畳敷きもある壮大なもので膨大な絵や写真がちりばめられた楽しいものです。理工系の人間ならずとも、わざわざ見に行く価値があります。